「海藻おしば」が教えてくれたこと
海藻デザイン研究所代表
野田三千代(のだ・みちよ)
 

海藻おしば作りを楽しむと、海藻は絵の具よりカラフルな植物たちだということがわかるのですが、これは地球環境問題をよく理解する糸口にもなるのです。

カラフルな海藻たちの存在を知ると、同じ植物なのに陸の草木の葉がみな緑色なことが不思議になります。その謎を解くと、オゾン層が太古の昔から地球の大気中にあったわけではないということを知ることになるのです。

今の地球では、太陽からの有害な紫外線をオゾン層がほとんど吸収しているために、私たちは陸上で暮らせるのですが、6億年前頃までは、オゾン層が未発達なために、生物を殺してしまうほどに強い紫外線が海中の5〜10メートルの深さまで届いていたそうです。そのため海藻も深い所でしか生きられなかったのですが、深い所には緑色の光しか届かないので、緑色の光をほとんど吸収できない緑色の海藻は生きられなかったはずです。

つまり約6億年前より以前は、緑色でないさまざまな色の海藻が深い所で暮らしていたのですが、その後のオゾン層の発達によって安全になった浅い所で緑色の海藻が暮らし始め、その子孫が4億5000万年前頃に上陸して、コケ植物、シダ植物そして種子植物へと進化したため、陸の植物の葉はすべて緑色なのです。

鎮田たつ子さん(右)と長崎県の海藻おしば教室にて




では太古になかったオゾン層がなぜ発達したのでしょう。オゾン層を生んだ主役は海中に漂うミクロな植物プランクトンだったのです。約30億年前に初めて現れ、太陽光を利用 して二酸化炭素を吸収し酸素を発生する光合成を営み始めたため、それまでなかった酸素が大気中にたまり、その一部がオゾンになつたのです。

吸収された二酸化炭素は植物プランクトンの体をつくる材料になります。そして植物プランクトンの遺骸は海底に沈み地下に埋もれて石油になりました。そのため、石油は太古の太陽エネルギーと二酸化炭素の缶詰みたいなものと言えます。

人類は快適な生活を求めて、オゾン層を破壊し、石油を使って二酸化炭素を増やし続けていますが、どちらも、植物プランクトンが何10億年もかけて整えてくれた地球の環境を大変な勢いで太古の昔に押し戻していることになるのです。

〈完〉


「海藻おしば」についてのお問い合わせは 野田三千代
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和紙を台紙として海藻を組み合わせたアート


ヒロメを主にした海藻アート

作品:鎮田たつ子さん提供